写真の内側・外側研究会

「写真と取りまく領域にあるさまざまな表現物に触れ、味わい、話し合う」

ウチそと研通信171

岡上淑子フォトコラージュ「沈黙の奇蹟」と豊原康久「Miryang密陽/麗水Yesou」展-

 

先の投稿から半年以上と少し間が空いてしまったが、最近観た展示の簡単な覚え書きをふたつ。

 

岡上淑子展は東京都庭園美術館で観た。数年前コラージュ集を見て以来、ずっと気にかかる存在となっていたので、実際の作品群を見、具体的な印象が得られたのはうれしかった。特に初期のコラージュとの出会いの時期の作品を多数見ることができたのは、個人的に興味深いことだった。岡上さんの手と眼が黒や赤の無地の紙の上で、なんとも瑞々しく動いているように感じられはしないだろうか。それから始まった何年かのコラージュ製作の緊張と弛緩の過程を会場であらためて追うと、始まりの時に岡上さんから流れ出したものの貴重さ、そうしたことを思う。

 

豊原さんの写真はいつも何処か割り切れないモノを含んでいて、ついつい見続けてしまう。DMにも使われていた装身具店の、装身具に紛れている女性の写真はその良い例だ。今回は久しぶりの展示だが、相変わらず、そしてまた少し変容を見せて目の前に展開していた。滑らかな移動と浮遊感をまとわりつかせてのスナップは終わりのない遍歴を豊原さんの身体を借りてしているようだ。今回の展示では「女子率」の高さに変わりは無いけれど、何点か写し止められた男達のちょっとした仕草が、移りゆく豊原さんの視線の移動の中で、ひととき、観客の意識を引き留めてしまう。面白く気になる部分ではある。今回展示のタイトルは素敵だ。魅力的な地名を「/」で対照させたタイトルは展示のまとまりをより緻密に感じさせる。そう言えば岡上さんのタイトルの言葉選びの感覚もやはり素敵に感じた。